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コラム22 <出版業界の現状 NPO法人書物研究会理事 松村信人
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2015年6月、出版取次4位の栗田出版販売の突然の経営破綻を受け、2016年2月、経営不振からの再生計画を進めていた同業界3位の大阪屋は「株式会社大阪屋栗田(OaK出版流通)」として新たな再建段階を歩むことになったが、同年2月には中堅の太洋社が自主廃業を発表するなど、この1~2年は出版取次業界は激震に見舞われている。業界トップ2の日販、トーハンは圧倒的なシエアを誇っているためその優位性はゆるぎないが、戦後初めての総合取次の破綻といわれた栗田出版販売の出来事は、一般の小売書店を相次ぐ廃業に追い込む結果を招くことになった。(この1年間で3割近くの書店が閉店したともいわれている)
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かつては経済の高度成長の波に乗って大型店舗の出店ラッシュがあり、再販価格制度に守られた書店経営は全国のいたるところで安定したビジネスとして成り立っていた。出版社もまた然りで、大手から個人営業にいたるまで多彩な会社が乱立し、百花繚乱の文化が咲き誇る時代が続いてきた。影が差し始めたのは1990年代後半、世は活版活字の世界に別れを告げ、写植の普及をはさんで、一気にDTPの時代へと突入しようとしていた。この時期の技術革新はすさまじく、とりわけ製版の世界では海外からも画期的な機械が次々に国内に導入されてきた(イスラエルのレスポンス、アメリカのマック製品など)。こうした印刷環境の急激な変化は、読者市場、出版市場の風景を一変させてしまった。設備投資と技術革新についていけない印刷会社は消え去る運命となった。
 
 一方パソコンの普及により、一般の人にとっては従来の専門的な知識がなくとも印刷手法が身近な世界となり、とりわけビジュアル系は手軽にしかも高精度な印刷物を手にすることができるようになった。その結果、活字離れが進みつつあった世相と相まって、よりデザイン性や編集技術に優れたものを競い合う形で、出版業界は多品種少量化の時代へと移っていく。直近の「出版年鑑」(出版ニュース社)によると、実はこの20年間で1000社の出版社が減少したということである。
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2000年代に入ると、さらに劇的な変化が訪れる。インターネットの登場である。文化を支えるシステムが著しく変容した。広告媒体としての紙メディアの価値が低下していき、WEB広告にその座を奪われていったのである。広告収入で成り立っていた商業雑誌は次々と廃刊もしくは部数減に追い込まれた。活字離れは一段と加速し、コミック本さえ売れにくい時代が続くことになる。そして出版業界では電子書籍にその活路を見出そうという動きが活発化してくることとなった。
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 そうした中、多品種少量化に舵を切った出版業界の要望に沿って登場してきたのがオンデマンド印刷である。今やすでに常識となっているが、コピー技術を進化させたゼロックスのドキュテックは、モノクロであれカラーであれ「1冊からでも印刷・製本が可能」をうたい文句にたちまちのうちに印刷業界に浸透した。しかも印刷業界ではすでにフイルムレスのCTP(コンピュータトゥプレート)が一般化し、完全なデータ入稿さえすれば、全国どこでも短納期・低価格で製品が仕上がってくる時代なのである。(ただしいくつかの制約条件がある)

さてこのパラダイムの大転換期には、同時に様々な業態が生まれてきた。冒頭の話に戻ると、流通の変革の中心はネット通販・アマゾンの出現であろう。当初は軽く見られていたそのビジネスモデルも時を経るごとに定着し、様々な軋轢を生みつつも、今では書籍販売の一大勢力にまでなった。また一般書店の衰退とは逆に電子書籍専門書店が次々と登場してきた。さらに古書店の業界でもリアルの店が姿を消し、書籍目録を中心にした全国ネットの通販主体のビジネスが主流となってきている。そこにはコンテンツの加工・流通にいたるコンサル業務、ソフト開発などを行うIT企業がすでに参入してきている。今や出版業界をめぐる環境に業界の垣根がなくなったとさえ言えなくもない状況である。
最後になるが、出版業界の今後はどうなっていくのだろうか。かつては時代の最先端であり、つかの間に滅びていった写植(電算写植も含む)業界では、唯一の財産は彼らが生み出した書体(文字母型)であった。写研であれモリサワであれ彼らが命がけで守ってきた書体こそが、業界は消滅しても国民の文化遺産として、そのライセンスは生かされているはずである。出版業界にあっては、究極の所いかなるコンテンツを生み出すかにかかっている。それをいかに世に広め、次の時代に残していくかは、関係する様々なメディアと融合し発展させていくほかはないと思われる。
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<関連事項>●ローテク時代の漫画本の聖地西村謄写堂(高知)、大友出版(大阪)/謄写印刷資料館(山形ガリ版資料館)●「雑高書低」から「雑低書高」へ日販、トーハンの今期5月決算では書籍の売り上げが雑誌(コミック本を含む)の売り上げを初めて上回った。●日本図書館協会「選定図書」が2016年3月末終了66年間続いてきた「選定図書」がなくなり、本が占めていた「文化の占有度」がどんどん低下してゆく象徴的な出来事。●東京国際ブックフェア(東京ビックサイト/9・23~25)、図書館総合展(パシフィコ横浜/11・6~10)●生まれ変わる出版プラットフォーム(TSUTA、有隣堂、明屋書店の挑戦)●『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)の衝撃ネット発ヒットコンテンツのしくみ●電子書籍の行方アメリカ出版協会の売り上げデータでは前年比14%減、マーケットシェアは3%減。<平成28年12月1日>


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